私は現在アメリカに住んでいるため、英語に触れるという点では恵まれた環境にいます。日本に住みながら英語を学んだり、海外と行き来している人の声が、読者の皆さんには、私よりも身近に感じられて参考になるのではないかと思うときがあります。
そこで、私もお話を聞いてみたい英語でデザインに関わる仕事をしている方が、どのように英語を学習しているのかを紹介する取り組みをやってみようと思います。
今回は、デザイナーの英語帳の読者でもあり、Figma でデザイナーアドボケートを務める谷 拓樹さんを紹介します。以前、谷さんとお話をしたときに「これから英語を使う面接なんです」と言っていたのがとても印象に残っています。その後、Figma Japan に入社されたことを知り、面接に至るまでの学習プロセスや、入社してからの様子を共有してもらいました。
谷 拓樹 (hiloki)
Figma Japan 株式会社デザイナーアドボケート。中小企業向けの SaaS、フリーランスでの受託、起業やスタートアップでの開発チーム立ち上げを経験。Web のフロントエンド開発や、UI · UX 設計をおこなう。現在は Figma のマーケティングやリソースの設計・開発に取り組んでいる。
Figma に応募するために3ヶ月間の英語学習
応募のきっかけは?
数年前からFigmaにハマって、情報発信やプラグイン開発をしていたんですが、日本のデザイナーアドボケートの職種の募集がオープンになったことを知り、応募しました。活動としては、Figma のベストプラクティスと共に、どう活用するかを発信したり、コミュニティ活動や登壇をしています。
Figma の採用プロセスはどうでしたか?
カルチャーや雰囲気に合うかどうを見られていたと思います。ラフに話をしながら、プロダクトのデザインとは違い、マーケティングやビジネスにも意識を向けなければいけないが、やっていけそうかを何回も確認されました。また、英語が十分なビジネスレベルには達していなかったので、コミュニケーションが取れるかどうかも見られていましたね。
面接はすべて英語で?
基本的に英語でした。僕の場合は、主に人事や、他国の Designer Advocate と話しましたが、これは職種や人によってプロセスは違うかもしれません。数回の面接がありましたが、毎回違う人でした。典型的な英語の面接でのフレーズを準備したつもりだったけれど、形式的な質問はあまりなく、頭が真っ白になりながら、カタコトの英語でどうにか、という感じでした。
Advocate の仕事として、日本のお客さんとのコミュニケーションも必須になるため、実務的な場面では Figma Japan の社員と日本語での面接もありました。
面接までにどんな英語学習をしましたか?
YouTube で外資系企業の面接プロセスの動画を見たり、Google で経験談を検索したりしました。ハイジさんの『デザイナーの英語帳』も参考にしていましたよ。
あとは、Figma の YouTube チャンネルで公開されている動画も見ていました。面接に参加する人の名前を事前に教えてもらえることがあったんですが、「面接官の名前(スペース)Figma」で検索したりしてましたね。それで面接で「動画見たよ!」と伝えたり。
英語そのものの勉強としては、3ヶ月間、面接と並行して、イングリッシュアカデミーで、英語のコーチングも受けていました。週2日間、1時間半のレッスンです。知り合いのエンジニアが、英語が公用語の会社で働いているんですが、英語のスクールに通っていると note に書いていたのがきっかけです。レッスンは、TOEIC の教材を使ってリーディングとリスニングを教わっていました。
講師は日本の人ですか?それとも英語のネイティブスピーカーですか?
日本人です。イングリッシュアカデミーを教えてくれた知人が、第二言語として英語を学んだ日本人の先生のほうが、日本人に合った学習方法を教えてくれていいよ、と言っていました。海外で働いていた経験があるなど、しっかりとした英語の知識と経験を持った人たちです。面接の前には、気になることを質問してましたね。
海外のカンファレンスで、話せなかった時の空気感が切なくなった
面接のための英語学習を始める以前にも、英語を勉強しようと思ったことはありましたか?
本格的に勉強し始めたのは、やはり面接がきっかけですね。でも、それ以前にも海外のカンファレンスに行く機会があったんです。現地に行くと、Twitter などで知っている有名人に会えたんですが、「あの記事見て、こう思いました!」って言いたくても言えなくて。イベントで「どこから来たの?」と話しかけてもらえることもありましたが、うまく話せず、喋れない空気感に切なくなったりしました。
それで英語を意識するように?
業界的に一次情報は英語なので、分からない単語を調べたり、海外の記事を日本語に訳して要約するということはやっていましたね。十数年前の出来事で、まだChatGPT などはなかったので、当時は Google 翻訳などを使いつつ訳していました。どういうふうに訳せばいいんだろう、と考えていたときは、英語に意識を向けていたと思います。
「英語を英語のまま理解する」感覚が実感できた瞬間
英語学習で続けていることはありますか?
iPhone アプリで学習しています。『Duolingo』は、初歩的だし、使い始めた当初は話せるようにならないだろうと思っていたんですが、気づけば英語学習のルーティンになっています。Streak* が分かりやすくて、50日とか続いていると途切れさせたくないんですよね。英語学習の習慣化に役立っています。
*:Streak は連続している行動や出来事のことを指し、アプリなどで継続の実績としてよく用いられる『Speak』という英会話アプリも使っています。フリーアジェンダで AI と会話ができる機能を使って瞬間英作文やスモールトークなど、会話の練習のために使っています。
あとは、単語学習のアプリ『キクタン』ですね。通っていた英語のコーチングで指定されたアプリで、毎日アプリで指定された数の単語を覚えていました。1日16語を覚えたら、2日目には前日に覚えた単語の復習と新たな単語の学習、そして3日目にも復習と新単語…という感じで続いていくんです。これをやっていた時は、ボキャブラリーが増えていた実感があります。
英語を学ぶ上で困ったことはありますか?
仕事のミーティングで同僚が話していた言葉が、実は知っている単語だったのに、音で聞いたことがなかったので、全然気付けませんでした。最初は、音を聞かずに学習していたんですが、口に出して覚えないといけないな、と思いましたね…。
ミーティングで困ったときはどう対処していますか?
分からなかった言葉は、日本語が分かる同僚に後で確認しています。ただ、同僚が言っていることを理解しようとしたときに、細かい単語やフレーズが分からないときはあまり考えないようにしていて。英語を理解するのではなく、内容を理解することにフォーカスしています。「いま言った単語ってなんだろう?」と意識すると次の話が入ってこないんです。英語を聞きながら、英語のまま理解する感覚です。それまでは日本語に変換するラグがありました。
英語のまま理解する感覚は、Figma で働き始めてからどれくらいで感じるようになったのでしょうか。
4, 5ヶ月目くらいです。入社して3ヶ月目に、Figmaのカンファレンス Config がサンフランシスコで開催されて、対面で同僚と話す時間が多かったんです。オンラインで話していたものとは違う感覚でした。
滞在中に雑談で誰かがジョークを言っていて、つい笑っちゃったんですよね。そしたら同僚が「ヒロキ英語分かるじゃん!」って言っていて、確かにそうなのかなって。日本語に変換するんじゃなく、英語のまま理解する感覚って、こういうことなのか、って思いました。
好きな英語の単語やフレーズを教えてください 💭
マネージャーの口癖が cool なんですけど、こんなにカジュアルに使うんだ!っていう驚きがありました。日本語でクールと言うのとは違うというか。同僚のリアクションのフレーズは真似しやすいですね。口頭の場合だと、口癖がうつりがちです。
他には、テキストでの表現なんですけど、略語ですね。 IDK = I don’t know とか、爆笑みたいな意味の LMAO = laughing my ass off、LMK = Let me knowとか。
教えてって表現は、Please tell me のように習った気がするんですが、英語で会話をしていると、実際によく聞くのは Let me know だったりします。日本での学習の流れであまり出てこなかった表現に出会うことが多いですね。
デザイナーの英語帳で役に立ったものがあれば教えてください🙏
定期的に配信されているニュースレターに出てくるフレーズは、仕事でもよく出てくるものが多いです。「複製する duplicate」とか。
単語や熟語も、役立っているんですが、話の繋ぎ方などが参考になっています。最近だと、動画で出ていた「デザイン案を共有する」の ”I’m going to share” みたいな言い出しのフレーズとか。僕は積極的にデザインを共有する機会は多くないんですが、どういう風に話を組み立てるかが、とても参考になります。
谷さん、ありがとうございました!
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私は韓国人ですが、日本語を習っています。 英語でも日本語でも外国語ができるのはデザイナーにとって良いと思います。🙂