2024年の最後の記事は、個人的に嬉しい報告と、それにまつわる私がやってきたことを恥ずかしながら少し明け透けにお届けします。
ありがたいことに、今月から会社でのタイトル(肩書)が Principal Visual Designer に昇格しました。Senior のタイトルで入社し、5年をかけて上位のタイトルとして認められるまでには、アメリカでただ働けるようになるという目標を越えた先にあった、いちデザイナーのキャリアとしてのひとつの到達点に辿り着けたような心地です。
このタイトルは会社や組織ごとに定義も様々なので、一概に他の会社のどのレベルに相当するかという議論は難しいのですが、私の勤め先では
Designer
Senior Designer
Principal Designer
の3段階のタイトル、中に複数のレベルが設けられています。
会社によっては、Junior や Staff などを加えてもっと細かくタイトルを分けていたり、Figma のように外向きに冠するタイトルは Product Designer のみに統一する代わりに L3, L4 のようなレベルだけを社内向けに設定しているなんてこともあります。
タイトルがすべてではないですが、駆け出しではないことや経験が豊富であることを簡単に伝えられるツールになるという側面もあり、会社ごとの意図が現れるポイントでもあります。
多くのデザイナーが所属する会社については、levels.fyi のように公開情報からその一端を垣間見ることもできます。エンジニアについての情報が大半を占めていましたが、近年は他の職種についてもそれなりに知ることができるようになっています。
日本で働いているときには縁の無かった制度であり、与えられるタイトルに強いこだわりを持っていませんでした。応募したポジションも Principal であったものの、採用プロセスの中の判断で Senior とされることになった時もそんなものなのだろうと受け入れていました。アメリカでデザイナーとして働けるという実感を持つまでは二の次の要素でしかなかったのです。
昇給を交渉する
日本で働いていた頃は、毎年のように評価査定があり、給与が少しずつではあるものの増え続けていました。そのため、昇給や昇格というものは何らかの仕組みが自分を勝手に評価し、自然に発生するものと思ってその時を待っていました。今思うと受け身がちな幼い考えであるとも言えてしまいます。
当初は、アメリカでまともに通用するデザイナーとして働けることが念頭にあり、入社時から日本で勤めていた頃に比べれば十分すぎる給与を貰っていたため、昇給を目的に何かアクションを起こすことに思いも至りませんでした。勤め先も定期的な評価プロセスに全員を通すような制度ではなかったために、ただ現状に満足して働いている社員のように扱われていたのでしょう。
しかし、3年ほどが過ぎて仕事に慣れた頃にふと「このまま私はこの給与のままなのだろうか」と気になります。インフレによる物価の高騰もあるため、給与が上がり続けなければ実質的には減収であるなんてことを聞いたこともあり、せめて今の給与に留まっている理由を知ろうと思い立ちました。
マネージャーにそのことを相談した際に、昇給についての希望を表明するべきことや、自身の能力や成果に見合った給与になるように交渉しなければならなかったと学びました。その相談は功を奏し、給与が 8% 増となる結果になり、ここまでの数年の働きが間違っていなかったことを確認できました。
上位のタイトルを求める
それでもタイトルが Senior であることについては据え置かれていたため、翌年は Principal のタイトルにしてもらえるよう具体的に取り組むことにしました。
当時、会社のデザイナーの中では私だけが Senior であり、一緒に仕事をしているほとんどのデザイナーは Principal であるために、自分が彼らに対してデザイナーとして何が劣っているのかを考え、焦るようになりました。他の会社のようにタイトルが特段付けられていないようであれば気にしなかったはずの違いに目が行くようになりました。
次の交渉に向けて、会社で採用や査定、社員のキャリア開発のために準備されているラダーシートを見直し、Principal Designer に求められる要件を確認するところから始めました。ラダーシートというのは、キャリアのステージに応じたスキルや役割、組織からの期待を整理した表です。昨年末に紹介した各社でデザイナーに求められるスキルと内容が似ていながらも、勤め先の要求の色が出た内容となっています。
ラダーシートによく目を通してから、Principal の要件を自分が満たしていると証明する実務上の事例をスライドに集めて交渉に臨みました。