架空の、偽の、人工的な faux
faux はフランス語由来の単語で「偽の」「人工的な」「模造の」といった意味を持ちます。
日常生活で見聞きすることは少ないですが、デザインの文脈では使いどころがあり、実在しない架空のブランドやプロダクトの名称やビジュアルを形容する時に使います。
発音は「フォー」のようになることに注意が必要です。私はスペリングから推測して「ファウックス」と読み上げてしまっている頃がありました。
We'll need to replace these faux brand elements with the actual logos before the final handoff.
最終的な引き渡しの前に、これらの架空のブランドのデザイン要素を、実際のロゴに差し替える必要があります。

例文
For the marketing website, we need to create some faux branding to fill the product screenshots. Let's design realistic logos and sample data that show how the platform works.
マーケティングウェブサイト用に、プロダクトのスクリーンショットに入れる架空のブランディングを作成する必要があります。プラットフォームの機能を示すために、リアルに見えるロゴとサンプルデータをデザインしましょう。
I used faux company names in this mockup so reviewers can focus on the functionality without being influenced by real brand perceptions.
このモックアップでは架空の会社名を使いました。これにより、レビュアーが既存のブランドイメージに左右されず、機能性について集中できます。
直感的に faux を思いつくのが少し難しく fake で代用していたのですが、仕事の中でプロダクトの使用例のために登場する、架空の会社の架空のブランディングをつくる際に、同僚が “faux branding” と繰り返していたのをきっかけに自分も自然に使えるようになりました。
FEATURE
faux branding をする
勤め先のプロダクトである mmhmm が、リブランドをして Airtime になりました。
Airtime はプレゼンテーションやビデオ通話を支援するツールであるため、企業に勤めているユーザーが、自社のデザインアセットを組み込んで使用することが想定されます。そのため、プロダクトの紹介では利用のイメージを伝えるために、架空の会社のプレゼンスライドのデザインをはめ込んでいます。
このデザインに私も携わっていたのですが、架空の会社のブランディングや、そこで実際に働いている人々についてもペルソナを想定し、現実味のある使用例を架空の会社でも表現できるように設計しています。まさに faux branding と呼べる仕事でした。
実際のデザインの過程の一部をここでは紹介したいと思います。
まず、プロダクトのリブランドにあたって、想定するターゲットオーディエンスや、既存ユーザーの層から、いくつかのペルソナを作るところから始めました。
次に、架空の会社のブランドカラーを設計しています。自由に架空のブランドについて思いを巡らせたいところではありますが、その前に Airtime のブランドカラーの補色を使うという制約を持ちました。
Airtime はユーザーが自社のブランドイメージに合わせてビデオプレゼンテーションをカスタマイズできるツールのため、それを紹介するビジュアルでは Airtime 自体のブランドのための色と、架空のブランドの色が隣り合って使われることが予想されます。
そのため、Airtime のブランドカラーと似た色を使ってしまうと、ユーザーが自由にカスタマイズできるという製品の特徴が伝わりにくくなることを避ける意図、Airtime の落ち着いた色調のブランドカラーに対比した色を使い、ウェブサイトの視覚にインパクトを持たせるという意図から、補色を使うというアイデアに至っています。
色を決めたところで、架空の会社のロゴ制作に取り組みました。