親しみやすい approachable
「このデザイン案は、ユーザーにとって親しみやすく、とっつきやすい」と伝えたかったときに言葉に詰まり、うまく表現をできなかったことがあります。
そのときに、同僚が私の意図を探るように “…approachable?” とピッタリの言葉を見つけてくれて、「親しみやすい」「気さくな」といった意味を持つ形容詞を、その出来事と共に強く記憶することができました。
一度はっきりと覚えると、デザイナーの議論の中で approchable が結構な頻度で登場していることに気づきます。
例文
How can we make this onboarding process more approachable for new users?
新しいユーザーにとって、このオンボーディングプロセスをより親しみやすくするためにはどうすれば良いだろう?
Our feedback has shown that users find the new app interface much more approachable than the previous version.
フィードバックによると、新しいアプリのインターフェースは前のバージョンよりもずっと親しみやすいとユーザーは感じています。
I think the new color palette makes our brand more approachable and friendly.
新しいカラーパレットは、ブランドをより親しみやすく、フレンドリーにしていると思います。
「親しみやすい」という日本語から、私が最初に思いつくのは friendly であったため、どのように approachable と違うのかが気になり同僚に尋ねたり、具体的な用例を探したことがありました。
そこから学んだのは friendly が、対話や操作など実際にやりとりが発生したときに、話しやすかったり、優しい様子を表すものであることです。
プロダクトの機能を人が使うときの感情に密接で、遊び心があり、ポジティブで楽しいものであることを示します。ユーザーが実際にプロダクトを利用する中で感じる親しみやすさや使いやすさについて話すときにより多く聞く形容になるでしょう。
対して approachable は見た目が話しかけやすい、近づきやすい雰囲気であることを指し、プロダクトやブランドのデザインが共感を呼び、相手を引き寄せる親しみやすさを持っていることを示します。
ユーザーがプロダクトに触れる前のコミュニケーションのような、ブランドデザインや、ビジュアルに着目したインタフェースのデザインについて議論するときに耳にしやすい言葉です。
また、ある同僚が面白い言及をしてくれたことがありました。
…weirdly, someone can be approachable but not friendly, as in they may look easy to approach but then they are not friendly in tone or with with their words.
不思議なことに approachable でありながらも friendly ではないということもある。見た目は近づきやすく見えるけど、トーンや言葉遣いが friendly ではないみたいな。
プロダクトのデザインでその姿を想像してみると、最初のクリックまではすんなりと辿り着くけれど、そこから難解な操作を押し付けられてしまう機能や、感じの良いランディングページに対して、実際に使用する部分は作り込みの浅いサービスみたいなものでしょうか。
デザインが与えるべき印象を意図できていれば、必ずしもデザインやプロダクトが approachable であり friendly でもある必要はありませんが、このふたつの言葉がいつも同時に成立するわけではないことを気にしていたいと思わされる一言でした。
FEATURE
インパクトを残し、親しみやさを持たせるブランドの刷新
最近目についた二社のブランドアイデンティティの刷新について紹介します。
いずれも、刷新前からのインパクトのあるビジュアルとのバランスを保ちながら、現代的な親しみやすさを与える approachable なブランドデザインを施したと言えるものです。
■ The Dinner Ladies
地元の食材を使った冷凍食品を宅配するオーストラリアのサービスです。17年前につくられたロゴはタトゥー風での「ステレオタイプな母親像」に対抗するような意図を持ったビジュアルでした。
調理済みの食品の宅配をするサービスは「健康」や「美味しい」といった決まり文句ばかりの中で ”We do dinner so you can do life. It's that simple.”(私たちが夕食を準備するから、皆さんは自分の生活を送れます。シンプルなことです)という実直なメッセージを当初から打ち出し、長く愛されてきたようです。
このサービスのリブランディングは17年間の中で薄れてきた独自のインパクトを刷新するためのものでした。刷新前のロゴを見るだけでも、少し古いブランドなのだろうなと思えるものですし、リブランディングの実施に頷けます。
新たなロゴは、元の大事にしていた要素を残しながらもモダンな姿に仕上がっています。特にロゴタイプでは、スミ溜まりをうまく強調し、手書きに見える文字が親しみやすさを醸しています。