世界観
デザインの文脈において「世界観」という言葉を使いたくなる瞬間は何度もありました。
「空気感」や「雰囲気」など似たような意味を持つ言葉のように、言語に依らない普遍的な概念のはずであると考え、検索して見つけた “worldview” や “view of the world” という直訳的な言葉を用いてみても、うまく伝わったことはありませんでした。確かに同僚が使っているのを見たことも聞いたこともありません。
worldview の意味を掘り下げると、個人や集団の人生観や価値観を指し、哲学的な文脈で使われることが多く、デザインやブランディングの話題の中では出てきそうにないことがわかります。どうやら私が探しているような英語と日本語で互換して「世界観」を意味する言葉はないようです。
この記事では、このような背景から私が日々働いている中で探し当てた、日本語の「世界観」に近く、場面に応じて使い分けられる言葉をふたつ紹介したいと思います。
■ aesthetic
「世界観」という言葉を使う時は、デザインやブランドが持つ独特の視覚的な雰囲気を指していると捉えることができます。「審美的な」や「美学」といった意味を持つ aesthetic が近しく、英英辞書を引くと
a particular taste for or approach to what is pleasing to the senses and especially sight
「感覚(特に視覚)に心地よいものについての特定のスタイルやアプローチ」
Aesthetic Definition & Meaning - Merriam-Webster
と説明されており、視覚的(かつ美的)な刺激がもたらす世界観というのは aethetic によって意味されていることがあると気づきます。
That competitor brand created a distinctive aesthetic in their video.
その競合ブランドは動画で独特な世界観を作り出している。
We created a consistent aesthetic across our website, packaging, and physical stores.
ウェブサイト、パッケージ、実店舗まで一貫した世界観を作り上げました。
The photographer's unique aesthetic perfectly matches our brand image. その写真家の独特な世界観は私たちのブランドイメージにぴったりだ。
■ brand universe
aesthetic は視覚的な要素に言及が留まりますが、デザインの文脈ではブランドの価値観、カスタマー体験、商品、コミュニケーションなど、ブランドやプロダクトを取り巻くすべての要素を意味した「世界観」を指したいこともあります。
マーケティングに関連する用語となり一般的ではありませんが、ブランドを取り巻くすべての要素が広がる宇宙を表現した brand universe という言葉が、まさに視覚だけに留まらない「世界観」です。
I love MUJI's simple and cohesive brand universe.
無印良品のシンプルで統一感がある世界観が好きです。
This pop-up store well captures our brand universe!
このポップアップストアは、私たちのブランドの世界観をよく表現しています。
We're expanding our brand universe through collaborations with local artists.
地域のアーティストとのコラボレーションを通じて、私たちのブランドの世界観を広げています。
FEATURE
世界観のあるブランド
日々、様々なブランドのデザインやケーススタディに触れる中で、特に世界観を伝えていると感じられた最近の事例を紹介します。
■ Anthropic
今日「世界観のあるブランドを挙げるなら?」という問いに、真っ先に思い浮かぶのは、生成 AI の Claude をつくっている Anthropic です。